開発の背景
2025年1月に埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故を契機に、下水道管渠に起因する道路陥没事故の防止が社会の重要な課題となりました。国土交通省主導による全国特別重点調査では、多くの箇所で早急な対策が必要とされています。管渠の改修には一定の期間を要するため、改修完了までの暫定的な安全確保が求められており、このニーズに応える形で本システムが開発されました。
キャンベル・サイエンティフィック・ジャパンはバイブレーティングワイヤー方式センサーや独自の信号変換技術を用いた変換器の提供、計測・通信システムの構築、現場側データ収集・通信装置の開発を担当しました。一方、日水コンは道路陥没メカニズムに基づく計測箇所の設定、センサーの設置・施工方法の検討、土層実験、クラウド側の監視システムの構築を担っています。
システムの概要
本システムは、レーダー波が届かない地中深部にある下水道管渠に対し、その近傍の地中に設置した圧力センサーで土圧・間隙水圧の変化を計測します。空洞がセンサー設置位置に到達した際に生じる圧力変化から、道路陥没につながる恐れのある空洞の発生・成長を検知します。
空洞の検知方法
管渠の局所的な損傷が判明している箇所において、管渠の上方1~2m程度離れた位置にセンサーを設置します。管渠への土砂流入に伴い拡大しながら上方の地表に向かって移動する空洞を検知する仕組みです。センサーの設置位置や管渠の埋設深さ・損傷状況によっては、地表面の道路陥没に至る前段階で空洞を検知できる可能性があります。

※本システムにおける「予兆検知」とは、道路表面の陥没が発生する前に、管渠周辺で発生・成長する空洞がセンサー位置に到達したことを検知することを意味します。
システムの特長
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地中深部の土圧・間隙水圧を計測
管渠近傍に設けたボーリング孔に圧力センサーを埋設し、地中深部における土圧や間隙水圧の変化を計測します。地表面からの調査が困難な深部でも、空洞がセンサー設置位置に到達した際に生じる圧力変化を捉えることで、空洞の到達を検知します。 -
長距離のケーブルを用いた計測
ノイズの影響を受けにくい「バイブレーティングワイヤー(Vibrating Wire:振動弦)方式」の圧力センサーを採用しており、センサー検出部と変換器間が長距離であっても計測が可能です。 -
LTE通信・独立電源による遠隔監視
計測データは、歩道上等の地上に設置した変換器および通信機器を介して、LTE通信によりクラウドへ無線送信されます。各種装置は、太陽光発電と蓄電池を組み合わせた独立電源で動作します。クラウド上では、予兆検知アラートや計測値のトレンド、機器の死活監視などを遠隔で管理することができます。

※本システムは、管渠改修までの期間における補完的な監視を目的とするものであり、道路陥没の発生を確定的に予測・防止するものではありません。計測結果を踏まえた点検や通行規制その他の対応は、道路管理者および下水道管理者が現地状況等を踏まえて判断します。
国立研究開発法人土木研究所内での土層実験では、実験土層を用いて空洞の発生・成長を再現し、空洞の成長に伴う圧力変化をセンサーで計測できることが確認されました。

今後の展開
今後は、実験土層で得られた成果を踏まえ、実際の道路における実証を通じて、地下水変動・地震発生時におけるセンサーの挙動等を確認する予定です。また、空洞調査における貫入試験を活用するなど、施工コストのさらなる低減につながる施工方法を検証していきます。
キャンベル・サイエンティフィック・ジャパンは、本技術を道路陥没対策にとどまらず、橋梁、トンネル、擁壁、斜面、ダム、港湾、鉄道、エネルギー施設など、社会インフラ全般の予兆監視へ展開し、安全・安心で持続可能な社会インフラの維持管理とレジリエンス向上に貢献していく方針です。
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