新幹線誕生への道のり:十河信二と島秀雄の「決意」
物語の土台となるのは、「新幹線の生みの親」である第四代国鉄総裁・十河信二と、技術面を統括した技師長・島秀雄の強い「決意」です。十河は、政治的逆風や巨額の予算不足という「非常識」な状況下で、一人で二人分も三人分も働くという精神主義、そして学閥打破による実力本位制(十河イズム)を浸透させ、組織を動かしました。
一方、島は将来を見据えた「動力分散方式(電車列車方式)」を提唱し、既存技術の組み合わせを強調しながらも、実際には半導体革命などを取り入れた最先端のシステムを構築しました。
鴨宮モデル線区での現場の奮闘
本書の核心は、鴨宮モデル線区で「夢の超特急」の実現可能性を証明するために奮闘した専門家たちの物語です。
車両設計の安全への執念
初代0系新幹線の足回りである「IS台車」の設計主務者である石澤應彦氏は、過去の数々の失敗経験から「絶対安全なんて絶対にない」という信念を持っていました。経年変化に対応可能な可変台車や、万一の車軸折損時に脱落を防ぐ「ツノ」などの安全機能を盛り込んだのです。
運転試験での世界最高速達成
モデル線での試験走行を指揮した大塚滋氏は、1963年3月30日、蛇行動による激しい震動の中でも運転士の手を抑えて加速を続け、当時の世界最高速である時速256キロを達成しました。そのクライマックスは圧巻であったと伝えられています。
軌道保守の理論的確立
盛り土が年に1メートルも沈むという過酷な地盤状況下で、ミリ単位の精度を維持する戦いに挑んだのは軌道の立松俊彦氏です。彼は精神論に頼る従来の保線から、数値を客観的に管理する「ジャリ山図」などの理論的な保守マニュアルを確立しました。

交流電化の難題解決
新幹線の成否を握る「交流電化」を担ったのは電気の前川典生氏です。50ヘルツと60ヘルツの混在問題や、高速走行時に発生する巨大な火柱(アーク)などの難題を、中古の周波数変換機や最先端の半導体(シリコン整流器)技術を駆使して解決しました。

運転士養成の情熱
世界初の超高速運転に対応できる運転士220名の養成に心血を注いだのは谷川公一氏です。彼の執筆した「使える講義録」は、想定外の故障に対処するための理論バイブルとして長く読み継がれました。
書籍が伝える新幹線の真価
新幹線は単なるハードウェアの成功ではなく、戦後日本の「青春の証明」であり、非常識な条件を突破しようとした無数の人々の「決意」の結晶であったことが、本書を通じて浮き彫りにされています。
著者プロフィール
高橋団吉(たかはし・だんきち)氏は、1955年生まれ、千葉県出身。株式会社デコ代表取締役を務めています。著書に『カマキリのエクスタシー』(小学館、1996年)、『新幹線をつくった男 島秀雄物語』(小学館、2000年、第26回交通図書賞)、『島秀雄の世界旅行 1936 – 1937』(技術評論社、2009年、第35回交通図書賞)、『新幹線を走らせた男 国鉄総裁十河信二物語』(デコ、2015年)、『新編 新幹線をつくった男 伝説の技術者・島秀雄の物語』(イカロス出版、2024年)などがあります。
書籍情報
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書名:鴨宮物語
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著者:高橋団吉
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発売日:2026年4月8日(水)
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仕様:A5判/456 ページ数
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定価:3,300円(本体3,000円+税10%)
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ISBN:978-4-8022-1640-1
書籍の詳細については、イカロス出版の書籍情報ページをご覧ください。
イカロス出版の書籍情報ページ

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